Atomistix ToolKit 11.2新機能紹介

Atomistix ToolKitの新バージョン11.2.0が2011年3月にリリースされました。バージョン 11.2.0では、計算速度の向上とメモリ使用量の軽減が達成されています。また、透過経路や複素バンド構造等の解析機能も新たに実装され、10.8から大幅に機能拡張が成されました。

リリース情報

バージョン Atomistix ToolKit 11.2
リリース日 2011年3月

新機能及び改善点

  • 計算速度とメモリ使用量
    • 2プローブ系SCF計算の際に自己エネルギーを保存する/しないをユーザ側で選択できるようになりました。自己エネルギーを保存しなかった場合、計算時間が長くなりますがメモリ使用量を大幅に削減できます。
    • 下記2つの要因によって、計算速度が向上しました。
      • 動作が最適化されるよう、いくつかのコアアルゴリズムが改良されました。
      • QuantumWise社が独自に開発した疎行列格納法が実装されました。
    • ATK内部で自己エネルギーに必要となるメモリ量を概算し、それが1.5Gbを超える場合は、計算速度が遅い代わりにメモリ使用量が少ないソルバーが代わりに使用されるようになりました。
    • ポアソン方程式を解くためのソルバーにFast Fourier 2D Solver(FFT2D)が追加されました。FFT2Dは、輸送方向にはMulti-grid法、輸送方向と垂直な2方向についてはFFT法を用いる手法です。FFT2Dの実装により、異種電極2プローブ系の計算をより高速かつ少ないメモリ量で計算できるようになりました。
  • SCF計算の収束性
    • Preconditioner機能が実装されました。この機能により、金属系のSCF収束性が改善されます。
    • 非平衡密度行列を散乱状態の波動関数から計算する機能が実装されました。
  • 新機能
    • Local Density of States(実空間上に射影された状態密度、LDOS)の計算機能が復活しました。2008.10ではk点依存のLDOSが出力されましたが、11.2ではk点についてサンプリングされたトータルのLDOSが出力されます。
    • 透過固有値の計算機能が復活しました。
    • 透過固有状態の計算機能が復活しました。2008.10では左電極側の状態を入射波に設定した場合のみ計算可能でしたが、11.2.0では入射波として左電極と右電極の両方を選択できます。
    • 透過経路(ローカル電流)の計算機能が実装されました。透過経路は、伝導電子の流れをベクトル表示で可視化するための機能です。
    • 複素バンド構造の計算機能が実装されました。
    • 応力テンソルの計算機能が実装されました。また、それに合わせて格子定数の最適化を含めた構造緩和計算を実行できるようになりました。
    • ゴースト原子を設定できるようになりました。
    • 分子動力学(NVT(Berendsen)、Velocity Verlet)の計算機能が実装されました。
    • 電極の構造のみから透過スペクトルを計算できるようになりました。この場合、出力される透過スペクトルは、(左電極)・(中央領域)・(右電極)が全て同じ構造からなる2プローブ系の透過スペクトルと等価です。
  • その他
    • Random initial spin polarization機能が実装されました。
    • ある計算で得られた電極の電子状態を他の2プローブ系SCFに再利用できるようになりました。
    • Checkpoint fileが作成されるようになりました。
    • 分子のエネルギースペクトル計算で使用されるenergy_zero_parameterのデフォルト値がフェルミエネルギーに変更されました。
    • DFT+U法の計算手法が改善されました。
      • “on-site” modelと”dual” modelを選択できるようになりました。
      • 各軌道の電子占有数の初期値をカスタマイズできるようになりました。
      • DFT+U法の計算で使用されるメモリ使用量が軽減されるようになりました。
    • 単斜晶系のバンド構造計算で使用される対称点が更新されました。
    • Intel MPIもしくはMVAPICH2を用いてMPI並列計算を実行できるようになりました。
  • 新計算エンジンの実装
    • 計算エンジン”ATK-Classical”・”ATK-PlaneWave”が新たに実装されました。これらの計算エンジンは現時点で試験的に導入されたものであり、機能も限定的です。今後のバージョンアップで機能拡張されていく予定です。
    • ATK-Classicalは、ASAPを基に作られた古典力学的ポテンシャルを用いて構造緩和計算や分子動力学計算を高速に実行するための計算エンジンです。Brenner potentials (carbon, hydrocarbon, silicon, and germanium)とEMT potential(Ni, Cu, Pd, Ag, Pt, Au)がサポートされています。
    • ATK-PlaneWaveは、Socorroを基に作られた平面波基底のDFTコードです。11.2.0では、Pythonスクリプトを介した全エネルギー計算しかサポートされておりませんが、2011年中にSocorroの全計算機能がATK-PlaneWaveで実行できるようになる予定です。

図1:グラフェンナノリボンのフェルミ準位における透過経路。

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図2:分子動力学計算による水中のプロトン移動。
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